これから定年を迎える方の再就職のありかた
就職活動は、正解のない問題に取り組むようなものです。正解がないだけに、途中で疲れたり、イヤになることもあるでしょう。
本書は、そんな時に勇気づけられるメッセージやわかりやすいたとえ話で、就職活動に立ちはだかる様々な壁を打ち破ることのできる、普通の学生がサラリと読める羅針盤です。
9月になっても内定が出なくて落ち込んでいたときに、友人に貸してもらった本です。
優しい言葉で、慰められます。
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昔から「人間いたるところ青山あり」と言われています。
人間はどこへ行っても生きていける、仕事がある、役に立てる、という意味です。
しかし、最近の勤め人には、「今、勤めている職場以外に「青山」はないのではないか」という不安が拡がっており、それゆえに定年に対する恐怖感を募らせているのです。
平成19(2007)年から、団塊世代が定年を迎えるので退職者が急増しました。
しかも、これからの退職者は、これまでのそれとかなり違ったものになるでしょう。
というのは、これまでは定年後の再就職は「会社が紹介してくれるもの」という発想がありました。
つまり、従来の職場、職業の縁によって、定年後も関連企業や関係事業に再就職する、広い意味での天下りです。
言いかえれば、定年後も終身雇用・年功賃金の延長に浸っているわけです。
A しかし、現実にはそれが次第に難しくなっています。
天下り型再就職が圧倒的に多かった官公庁でも、このところそれに対する批判がかなり強まっています。
民間の金融機関や総合商社や大手メーカーなどでも天下りが難しくなっているときに、官僚だけがいつまでも天下りを続けていいのか、という反発が生まれているのです。
平成19年から定年の時期を迎えた団塊の世代は、「天下り型」ではない再就職のあり方というものを考えねばならなくなった。
このことに重圧を感じているかたも少なくないでしょう。
それをはねのけて、陽気に上手に再就職するためには、「定年」をどのように考えるか、根本的なところから読み解いていく必要があります。
定年とは何か
定年とは、「終身雇用・年功賃金の雇用体系からの離脱時点」ということです。
決して仕事をしなくなる時点ではありません。
日本では、1960年頃から終身雇用・年功賃金制度が一般化しました。
その制度では、職場への貢献(成果)曲線と職場から受け取る賃金曲線とは乖離しています。
入社直後から一年ぐらいは研修を受けたり、先輩に尋ねたりの教えられる側です。
だから、むしろ職場の負担になります。
一応の職場訓練を受けた段階で急速に上昇し、40歳前後で最高に達するのが多数です。
その後は人によって大差はありますが、全体としてはほとんど変わらず、55歳ぐらいから少し落ちてくる、というのが平均的なケースでしょう。
それに対して、賃金は勤続年限に応じて急激に上昇する。
20代から30代にかけて賃金曲線のカーブが上がります。
これを手取り給与ではなく、職場の負担給与で見ると非常にはっきりしています。
30代になると郊外に家をもって、通勤費が増える、子供が生まれ、家族手当が増える。
さまざまなことを勘案すると、30代から40代にかけて職場が従業員に対して負担する総額は急激に上がり、その後も上がり続ける。
50代前半がピークになり、後は横並びに推移します。
本人の手取りは増えなくとも、雇用者が負担する医療・社会保険関係の費用は増えてきますから、職場の負担という観点から見ると、定年間際まで高い負担が続くわけです。
もちろん、人によっては管理職を務めて役員になり、あるいは技術開発や社会的貢献で名声を高め、50歳、60歳でも、給与よりはるかに大きな貢献をする人もいますが、ごく平均的な人を見れば、今説明したとおりに進むのが一般的でしょう。
年功賃金制度では、20代から30代の間は、職場への貢献曲線よりも賃金曲線のほうが低い位置にあります。
従って、その差額は、勤労者が会社に対して投資をしている、ということになります。
だから、日本企業の従業員はみな会社への出資者であり、会社の経営に強い関心をもつようになるわけです。
それが40歳前後、管理職になる頃から逆転して、職場への貢献よりも、むしろ支払われる賃金のほうが高くなります。
これは若い間に積み立てた部分を取り返すということになるわけです。
この二つの領域 - 貢献超過部分と支払超過部分とは、長期雇用の間に釣り合わなければなりません。
雇用期間を無限に延長すれば、企業としては支払超過が大きくなってしまう。
だから、あるところで線を引いて、終身雇用を打ち切らなければなりません。
そのための打ち切り点を定めたのが定年です。
そして、定年までの貸借関係の残余は、退職金で清算するわけです。
従って、途中入社の人は最初に貢献の積み立てをしていないので、人事においては不利に扱う傾向があります。
一方、途中で退社すると、若い間の積み立ての取り戻しができないので、個人のほうが損をする形になります。
職場(企業)と勤労者(個人)との最良の妥協点は、「新卒から定年までの終身雇用」なのです。
定年の時点では、過去の蓄積の払い戻しを加えた「社内価格」で賃金を得ていますが、それは市場価格、すなわち実際の労働対価からはかなり乖離していると承知しなければいけません。
過去に蓄積したものを取り返しているのだから、その分だけ市場価格=現在の働き以上の賃金が支払われているわけです。
定年になれば、当然この体系から離脱することになります。
そして再就職する場合は、同じ職場の再雇用であったとしても、市場価格で採用されるのです。
査定のフィールドが違うわけですから、「以前に比べて何割下がった」という考え方はやめたほうがいい。
賃金が下がったのではなく、市場価格になったのです。
賃金が下がったことで、自分の値打ちが下落したと卑下する必要もなければ、世間の目が冷たいなどと怒るべきでもありません。
再就職、再雇用の場合には、どうしても前職と比較し、「仕事の内容は変わらないのに給与が下がった」 と残念がる人が多いのですが、そうした比較自体が間違いなのです。
定年後は、年功賃金・終身雇用にとらわれない「自由なる労働者」として職場に対応することになります。
このことを雇用者側から見ると、知識と経験と意欲のある低賃金労働力が出てくることを意味しています。
日本経済というマクロの視点からは大変ありがたい状況だと言えるでしょう。
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