新入社員から学ぶ
グローバル競争を勝ち抜くには製造部門だけでなく、いまこそ生産性の低い元凶である事務管理部門・管理職の革新が不可欠。
最も遅れ、改革困難で取り残された分野にトヨタ式を応用した実践事例を基に初めて説き明かす
なぜ、ホワイトカラー部門の改善は難しいのか?どこから着手すべきか?トヨタ式には、(1)整理・整頓などの5Sから始めるベンチマーク型、(2)部門の役割・機能を劇的に変えるシステム再構築型の2類型がある。現場戦略・部門戦略のシナリオ展開、「7つのむだ」の徹底的排除、「観える化」、プロセス分析、チェンジリーダーの育成など、具体的に応用する方法を詳説。
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ある学習グループがある。
そのグループに入るには、資格のある人の紹介がなくてはならず、そのほかにもいろいろと条件がある。
新たに入ってくるメンバーは緊張のうちにも期待に胸をふくらませてくる。
学習意欲に燃えている者は、どのように勉強をしたらよいか、どんな本を読んだらよいかと熱心に聞いてくるが、それには答えないことにしている。
はじめから勉強の仕方などを教えたのでは、自由な発想の芽を摘んでしまうことになるからだ。
グループにとっても、学習の観点から見てもっとも役に立つのは、入ってきたばかりのときである。
フレッシュな物の見方で新風を吹き込んでくれるからだ。
グループの中に入り込んで慣れてくると、自然にグループ特有の考え方をするようになる。
マンネリズムに陥ってしまうのである。
企業の新人教育についても同じことが言える。
企業に入ると、企業の独断と偏見に基づいた教育を受ける。
しかも新入社員の個性が全く考慮されない団体研修である。
組織の立場から、組織として守ってもらいたいことを教え込むのだ。
新人の採用には多大の時間とエネルギーが費やされている。
ルールを破り、抜け駆けをしてまで優秀な人材を確保しようとしている。
それだけの努力をして手に入れた金の卵であるにもかかわらず、無神経な新人
教育によってわざわざ普通の卵にしてしまう。研修という名のもとで個性を抹殺し、得がたい才能を押しつぶしてしまう例が少なくない。
新人は大切な資産であるから、もつと大事に扱う必要がある。
特に当初は企業内でもっとも優秀な人材が教育を担当するべきである。
しかも新人の一人ひとりに対して、それぞれ専属の担当者がいるという方式が望ましい。
ひまがありそうな者に指導を任せるという安易なやり方はよくない。
企業の新人教育は一大事業であるという認識が必要だ。
それぞれのよい個性や優秀な能力を発揮できるように手助けをしてあげるという姿勢でなくてはならない。
最初から上司と部下という関係を押しつけてはいけない。
まず信頼関係を築きあげる。
それには、さまざまな方法がある。
友だちのようなつき合い方もあれば、親が子に対するようなアプローチの仕方もある。
先生が生徒に対するような接し方もある。
いずれにしても相手の身になって教えることが必要だ。
でないと、口ではわかったと言って表向きは従っていても、心の中では反抗していることが多いからだ。
教育は最初が肝心である。
はじめに悪い癖がついたら、矯正するのが難しい。「三つ子の魂百まで」である。
手間がかかるようだが、はじめに時間をかけ、念入りに教育しておけば、後が楽だ。
きちんと方向づけができているので、後の労力は少しですむ。
日常の業務が忙しいからといって手抜き教育をしていたら、やがて何倍ものツケを支払わされるハメになる。
新人教育はそれだけの大事業であるから、真面目に取り組むと、このコストはきわめて大きい。
ずいぶん昔の話になるが、ある事業主から大学を卒業する長男を預かってほしいと依頼された。
二、三年間びっしりとビジネスを仕込んでもらった後で自分の会社に入れたいとのことであった。
私も独立して仕事をし始めて間もない頃であり、それほど忙しくもなかったので引き受ける気になっていた。
話がかなり煮詰まってきた段階で、事業主のほうから「いくらぐらいでしょうか」と金の話を切り出された。
私はある金額を示した。すると、「そんなにいただけるのですか」と言われ、びっくりしてしまった。
私は教育をするのに対して報酬をもらうつもりでいたのに、相手は給料をもらえると考えていたのだ。
二、三年もしたら家業を継ぐのであるから、私としては一生懸命に教育をしても、直接的な形で元を取ることはできない。教育に対する報酬は当然と考えていた。
友人たちによると、私のほうが非常識だったというが。
会社の中に長くいると、外の世界が見えなくなる。
その観点から見ると、新入社員は実に新鮮な物の見方をしている。
企業内で当然だと思われている仕事の進め方や考え方などについて、率直な意見を聞くチャンスである。
そのようなシステムを企業内につくりあげる必要がある。
ひととおり会社の説明をし、見学を終えた後で、経営幹部が新入社員から研修を受ける機会などをもっとよい。
社長をはじめとする、できるだけ上の人たちが、新入社員から教えてもらうという姿勢があれば、必ず大きな成果が得られるに違いない。
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